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【三和に住むことが、命と暮らしを守り健康に生きることに】
「里山のあたたかさ、空のやさしい、空気のおいしい、三和町が好きです」と話す森安咲さん。横須賀に育ち、甲奴町で母の知り合いの家から甲奴中学校へ通い、三重の全寮制高校で有機農業を学び、倉敷の大学で薬膳・鍼灸を勉強し、鍼灸師になった。そして、2018年、三和町へ。母とともに薪ストーブのある暮らしをはじめる。将来、鍼灸をいかせればと、近くの福祉施設に就職し、山仕事をする彼にひかれて結婚し、今は大家族に支えられて子育てをしている。
すべては「人のつながり、縁があっての今」になる。今の三和での暮らしは、中学生活をおくった甲奴の人たちとのつながりが生きていて、昔風の大家族の生活に寄り添い、見守ってくれていることを実感する。また、有機農業の研修をさせてもらったことが、家族の命と健康を守る食事を支えてくれている。有機でつながる町の人のきずなが、地域の農業を有機農業へ転換させるような、そんな流れも見えている。
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【自分のことより人のこと、”きずな”でつながる地域】
咲さんの横須賀での「起」は、新しい家族と新しい命をいただいた三和での前半生として「承」につながっている。この三和で紡がれている生活がどうなるのか。山や里山、その自然の生態系につながる命が、人の営みでつながる地域社会となり、その社会によって決まる暮らしの質や生きがいが、このまま持続できるのかという現実世界の「転」になる。そして、この三和での暮らしの中での「承」の先に、人が生きていく上で大切なことが待ち受けていると、咲さんは考えている。
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咲さんは「家族と地方の消滅という時の流れを変えられるのは、臆せず汗をかき、採れたものを食べる地産地消と、人と人の”きずな”だと思います。いくらになるかという見返りより、支えあう思いやりだと思います。ここ三和町には人と人がつながる地域の”きずな”が強く残っています。娘のおじいちゃん、おばあちゃんは、自分のことより人のことを思いやります。都会から地方へ移住を考える若いお母さんがなにより望んでいることは人への優しさです。助け合い、支えあい、思いやりのある『人と人のきずな』がここにはあります」と語る。
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この地域の人びとの横の”きずな”に支えられ、縦の”きずな”が家族となる。家族という縦の”きずな”が命となり,自然の有機である命が、奇跡のようにつながっています。その命が、自然の畏敬につながる薪火に支えられて営まれていきます。地域の”きずな”の基礎に大地の恵みを受けた営みがあります。おだやかな里山を背に、やさしい川の音につつまれた、食べ物と仕事と暮らしが、また次の命につながる。そんな三和での物語を、私の「結」にしたいです」と、咲さんはやさしい笑顔で語ってくれた。