「市外に出ても、いつかは三次に帰ってくると、心のどこかで“当たり前”のように思っていた。」という、古川 卓(こがわ たかし)さん。広島市内の高校を卒業し、その後、紆余曲折を経て、カナダの大学で心理学を学んだ。 その後、臨床心理士として県外の病院に勤務し、「そろそろ三次に帰ろうかな・・・」と思いはじめ、しばらくしてから三次市への帰郷を決断した。現在も勤務している子鹿医療療育センターでの就職を機に、三次市に帰って来たのが10年前のこと。
三次市に帰ってきてからは、臨床心理士として働きながら、青空保育所で勉強を教えることを始めた。学習のサポートをしていると生徒の人数も次第に増え、自分の中でも「子どもたちが学べる場所を、もっと創りたい。」と思うようになった。一念発起して、2023年に『(一社)KiT』を設立。KiTという名前は、教育や子育てを身近にサポートできる道具箱として存在できればという思いで命名した。
「子育ては親だけの責任ではなくて、地域の役割も大きい。子どもたちの“社会性”を育むためには、学校、そして地域との連携も大切。」そう話す古川さんの目は、熱い思いにあふれている。あわせて、古川さんは、三次市内だけではなく、他市との“ツナガリ”もあり、市内の子育て事業、保護者勉強会やサポート活動にも積極的に関わっているとのこと。
三次市内に暮らしながら、これらの活動を通じて、「昔と違って、今の家族や家庭のあり方は “多様化”している。多様な価値観や家族の在り方に共感しながら子どもたちとかかわりたい。」と古川さん。「今後は心理学の知識をより活かして、子どもの社会性や心の安定に寄与できるようなサポートもしていきたい。」とも。
また、古川さんは三次市に帰ってきて、両親が近くにいるということもあり、 “安心感”を感じると話す。両親のところへ行ける距離に暮らすことで、いつでもお互いの協力体制が確保されていて、子育て層の夫婦の感覚としても「不便に感じることはない」と、インタビューの最後を締めくくった。
三次市に帰ってきて、自分の思いを実現しながらも、「不便を感じない豊かな暮らし」を続けている古川さん。その立ち姿を見せることも、これからの子どもたちに見せたいところだ。